米国での法人設立に関する税務 [税金]
いつもブログをお読みいただき有り難うございます。
今回は、米国での法人設立に関する税務について書かせていただきます。
■米国での法人設立の出資形態■
米国における法人の設立には、財産出資と労務出資という二つの出資形態がある。
財産出資には、金銭による出資(金銭出資)と金銭以外の現物による出資(現物出資)がある。
はじめに金銭による出資(金銭出資)、次に金銭以外の現物による出資(現物出資)、最後に労務による出資(労務出資)と説明します。
●金銭出資
財産出資の一形態である金銭出資は、税務上は最も簡単な取り扱いになっている。
金銭出資者は、出資する現金額を株式に、税務上の簿価(adjusted basis)として付け替える。
設立法人が受け入れた現金の税務上の簿価は、その額である。
両者のいずれにも課税関係が発生しない。
例)出資者トムが金銭$10,000の出資を行い、時価$10,000の株式を取得した場合。
出資者トムの仕訳は、以下のようになる。
借方 貸方
(株式) $10,000 (現金) $10,000
●現物出資
株主が現金以外の資産(property)を会社設立時に出資し、株式を取得する場合。
この場合には、①現物出資した人が、会社設立と同時に会社を支配した場合と、②現物出資した人が、会社設立と同時に会社を支配しなかった場合の二つがある。
①現物出資した人が、会社設立と同時に会社を支配した場合
一人あるいは複数の者が、現物出資をして会社を設立し、設立と同時にその会社を支配した場合には、原則として株主側も会社側も損益(gain or loss)を認識しない。
出資者が会社を支配した状態とは、次の条件を満たすことである。
・会社が発行した全ての種類の株式の80%以上の議決権を持っている場合。
・会社が発行した全株式の、80%以上の株式数を持っている場合。
例)出資者トムが、簿価$2,000、時価$10,000の土地を現物出資し、会社を設立し、会社を支配した場合。
この時、課税関係は、出資者トムにも会社側にも発生しない。出資者トムが受け取った株式の簿価には、土地の簿価$2,000を付ける。
出資者トムの仕訳は、以下のようになる。
借方 貸方
(株式) $2,000 (土地) $2,000
次に、抵当権の付いた財産を会社設立時に出資した場合。
抵当権などの負債の付いた資産を現物出資した場合であっても、設立と同時に、その会社を支配したのであれば、通常は損益を認識しない。
設立した会社が、株主の負債を引き受けた場合であっても、同様である。
例)出資者トムが、簿価$2,000、時価$10,000、抵当権付借入金が$1,500の土地を現物出資し、会社を設立し、会社を支配した場合。
課税関係は、出資者トムにも会社側にも発生しない。
出資者トムの受け取った株式の簿価には、土地の簿価と軽減される借入金の差額$500(土地の簿価$2,000-抵当権付借入金$1,500)に付け替える。
出資者トムの仕訳は、以下のようになる。
借方 貸方
(株式) $500 (土地) $2,000
(借入金) $1,500
ただし、会社が引き受けた負債およびに出資した資産に付いていた抵当が、出資した資産の簿価よりも大きい場合には、その差額部分を利益として認識しなければならない。つまり、課税される。
例)出資者トムが、簿価$2,000、時価$10,000、抵当権付借入金が$3,000の土地を現物出資し、会社を設立し、会社を支配した場合。
課税関係は、出資者トムは再評価益として$1,000(抵当権付借入金$3,000-土地の簿価$2,000)が発生する。出資者トムが受け取った株式の簿価は$0とする。
出資者トムの仕訳は、以下のようになる。
借方 貸方
(土地) $1,000 (再評価益) $1,000
(株式) $0 (土地) $3,000
(借入金) $3,000
②財産出資した人が、会社設立と同時に会社を支配しなかった場合
現物出資した株主は、出資した資産について損益を認識しなければならない。
すなわち、現物出資した資産は、資産の処分として扱うことになる。
例)出資者トムが、簿価$2,000、時価$10,000の土地を現物出資し、会社を設立したが、会社を支配していない場合。
出資者トムにおける税務上の仕訳は、まず再評価益$8,000($10,000-$2,000)を計上する。
受け取った株式の簿価は、再評価益を計上後の出資簿価$10,000に付け替える。
会社側のおける受け入れ資産の簿価は、時価$10,000を引き継ぐ。
出資者トムの仕訳は、以下のようになる。
借方 貸方
(土地) $8,000 (再評価益) $8,000
(株式) $10,000 (土地) $10,000
●労務出資
会社に対して労務を提供し、その見返りとして株式を受け取った場合には、報酬として所得を算入しなければならない。
例)出資者トムが労務出資を行い、時価$10,000の株式を取得した場合。
課税関係は、出資者側では報酬として$10,000の課税益が発生し、会社側では支払い報酬か
創業費のいずれかが発生する。
借方 貸方
(株式) $10,000 (報酬所得) $10,000
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Written by
Office T.Professional(オフィス ティー.プロフェッショナル)
米国税理士 小野 知史(Tomofumi Ono)
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e-mail: info@tprofessional.jp
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